音楽の立体造影/瀬崎 虎彦
 
臭い息を吐きながらバスに詰め込まれて
長い坂道を登りまた降りてゆく
雨に濡れた路面と涙を含んだまつげが
ブレーキのたびに摩擦で軋む

日々は流れる水のようでいて
なにも清浄にすることがない
日々はただ流れるだけで
心の滓は女の膣にぶちまける

女たちは僅かな稼ぎを大事そうに
腰巻の下に隠しているが
彼女たちの不幸の源泉は家庭にこそ有る

救いなどない日常で宗教とアルコールが
電信柱の影で独特なメロディを
がなりたてているのを犬が聴いている
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