包丁/
綾瀬のりこ
冷たい銀色の刃を
白い腕にあて
力を入れてスーッと引く
白い皮膚に赤い筋がつく
なぜだかわからないが
心が落ち着く
けれどすぐに不安にかられ
再び刃をあてて一気に引く
何度これを繰り返しただろう
何時でも自分をなだめられるように
包丁を握り締めて眠った
やがて赤い筋をつける場所がなくなり
包丁を左手に持ちかえた
新しいキャンパス
白い腕に赤い筋
心地良い痛み
繰り返し 繰り返し
繰り返し 繰り返し
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