傷/
綾瀬のりこ
転んで擦りむいた
歩くたびに
ズキンズキンと
痛みが伝わる
小さな傷が
私は生きている
私は生きている
と叫んでいる
なぜか痛みが心地良い
どこかいとおしいその傷は
独り転がっている
間の抜けた光景を
少しだけ誇らしげなものに変えた
どこかいとおしいその傷は
自分でわざとつけたものではないけれど
自分でつけた傷にも似ている
奇妙な安堵感
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