竜の牙/いとう
竜が獲れた。これで数十年は村の食料だけで
なく地位も名誉も安泰なのだろう。ウマサ(*1)
が長と何か話しているがここからは聞き取れ
ない。若い者が数名命を落としたらしく、笑
みの合間に時折顔が歪められ、その歪みが女
たちを不安にさせる。ウマサも全身に血を浴
びていて、それは自身の血なのか、誰かの血
なのか、竜の血なのか、よくわからない。こ
こからは判別できない。
狩り場へは半日かかるらしく、明朝、日の出
を待って村の者のほとんどで現場に出向くこ
とになる。解体は残っている男たちがしてい
るはずなので、それを運ぶ者、炊き出しをす
るもの、隣の村へ手助けを頼み
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