忘れえぬこと/朧月
 
生まれるはずだった私の子供は
こんな朝にもあらわれます
さむいって

生命がただ恐ろしかった私に
ぞんざいに扱われた私の子供
かっと見開いた目で私をみつめてほしい

耳だけがさえて 
音と振動だけがおおいかぶさる時間がすぎて
私はまた ひとりになった

生まれなかったけれど 離れなかった
そう思っているのは私の甘え
体温はなく この指はなにも掴んではいない


花に水をやる
やりすぎて枯れないように
繊細な命に触れる 間違わないように 触れる

空には 隠れた太陽
雲には 感情なんてない
大地には あるのだろうか 
命は 巡るの?


私は やっぱり生きるから
葬った 命と共に


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