ランプシェードの夜に/ねことら
 



空き箱に
飛び火した


それだけなんだ




夜は細く折れ曲がり
ランプシェードのなかにいるみたい


薄い毛布をぐるぐる巻いて
音のないラジオを聴いている




ひとりごと、には
読点が足りない
ので


ひっそりと結露する
ものもあった



(こんばんは、おばあさん)



何におわかれを、してきただろう
いやな水をくぐって
楕円形のあいさつを
おぼえて
痛みのない、はかりごとを
くりかえしている






空想、






なまえを呼んでみる
収まりのわるいさびしさが
できるだけ、やさしい顔を
してくれるように




喉をゆっくり開く
一粒一粒、紡いだ音色は
かすかに泡立ち
きっと、此処にも
針のような繊細が降る




わたしたちのすべての
ランプシェードの夜のうえに







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