今そこにないものを確実に意識しながら/
瀬崎 虎彦
くちびるから風を運んで
気がつくとそこにハルがいる
粒子の波が雲の切れ間から
美しいオルゴールのように
血を流したりはしないけれど
人はみなそれぞれの戦場を抱え
ふと息をついたときにどうか
わざとらしくない空が見えてほしい
眠りがほどけるころには
影が伸び始めている
キミの未来に何を賭けることも出来ない
祈りがほどけるころには
愛が芽生え始める
今そこにないものを確実に意識しながら
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