単純な物語に回収されてはならない 1/真島正人
たぶん私たちは恐れを忘れてしまった
チェスの駒で現実を語り、物語は日々陳腐になる
弾幕で煙たくなった目は配分する力を失っている
大声で吠えるものたちだけが跋扈して
誇りと情緒不安定を履き違えたまま通勤する
単純な物語は肥大した扁桃腺だ
音に震え音を捻り出す
天使のハープを石に変え、死者の魂を利用して、恥じることすらない
かつて体感した記憶だけが現実であり、体感を勝る事実は無いということを
忘れ果てた人々は
再び古い物語を選択しうる
使い捨てられ、唾を吐きかけられ、あれだけ軽蔑された物語、それは
甘い砂糖菓子のコーティングと英雄
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