小鳥/綾瀬のりこ
小鳥が死んだ。
何の前ぶれも無く突然落ちていた。
鳥が死んだ事に驚いたが
それよりも自分の心が波打たない事に驚いた。
何の感情もわかない。
涙も出ない。
子供の頃から色々な生き物を飼ってきた。
そしてそれが死ぬたびに涙してきた。
育てていた花が枯れたと言っては泣いた。
けれど今は一粒の涙もこぼれない。
小さな鳥の死よりも
明日の仕事の方が大切なのか。
心が乾いてしまったのか。
いつからこんなふうになったのだろう。
小鳥は明日真っ赤な炎で焼かれる。
ごうごうと焼かれて真っ白な骨になったら
死を見つめる事ができるのだろうか。
私の瞳から涙の一粒が落ちるのだろうか。
戻る 編 削 Point(11)