西瓜/サカナ
夏の初めの宴会は
私の手の届かないところで始まる
少し水を含んだ粘膜が柔らかく糸を引き始めて
まだ湧いたばかりの入道の行方を
飛ぶ鳥だけが追いかける事が出来る
遅咲きの妹は去年の春に熟れた
食べごろなのにとひとりごちて
静かに悲しいねといった
五分丈の袖から爪へのラインがきれいな妹の体が
縁側に寝転がって風を呼んでいた
栞をはさむ作業が好きだといってでたらめなところに爪を立てた
余分な事が全部世界の裏側にいったような気がした
線香花火で終わる夏を待ち切れないでいた
夏蒲団に埋もれていた脚から風の滴る音がする
障子戸の隙間から覗く庭には昔からの雌鶏がいて
あの目
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