砂の記憶/小川 葉
 
 
 
掌から零れていく
砂は一粒の記憶
思い出せば
波に洗われて
二度と現われない
小さな墓石
寄せては返す波が
足跡を消していく
やがて僕らは
指と指の隙間だけを残し
いつか見た夕日を
昨日のことのように
その隙間から見ている
 
 
戻る   Point(4)