宇宙/九重ゆすら
慟哭はたちまちの内に凍りつき
ひとつの惑星になってしまった
あまりに穏やかなその姿を
僕は畏れた
◇
硝子ほど鋭利ではないけど
涙ほど優しくもなくて
だけど人を殺すことはできる
そんな宇宙で
太陽の黒点はなおも黒く
月の海はなおも白かったから
その光景を丁寧に瞼の裏っかわで記憶した
見知らぬ光と共に とても多面的に
やがて
透明な波が僕を飲み込み
とてつもない熱と一緒になって
激しい風が巻き起こった
だから暫くぎゅっと目をつぶっていたのだけど
波が消えた頃には左手の人差し指の爪が
ほんのちょっと、欠けていた
それで僕は、星が生まれた事を悟った
今の爆発で
きっと世界の嘘は焼き尽くされたよ
輝きが崩壊して
新しい輝きが産まれる
星の産声は無音だ
呼吸など覚えていないから
とても美しい姿でそこにある
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