1978-/水町綜助
1985-
空に敷かれた黒いうろこが
ぽろぽろと剥がれてゆくとき
一枚が地に落ち
流れ出す水の音が聞こえ
また一枚が地に落ち
呼気が甲高く
一枚が砕けて
それはなき声と繋がって
走り行く白い車
ローレルという名前だった気がする
木々のあいだを縫いつける光
後部座席にこぼされたミルクを照らし
車内は
ひたされ
光が掻き回し
つぎつぎと破裂しては落ちていく明るさの中で
母親の顔をみた
白いハンカチがミルクを吸い
じ と小さな染みが点り
吸い続けている
母はひろがる染みに
視線を落とし続けている
閉じかけられた瞼と
まつげに結露するひかり
停止した母
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