はなび/木屋 亞万
冬に花火をしないのは空が寂しくなるからだ、と思う
寒い中に一瞬だけ弾ける火の花が
マッチ売りの少女が起こす小さな火のように儚く消えて
すぐに冷たい風に流れ去っていく
乾いた夜空の、花火を冷笑する冷ややかな視線
と、静寂
いくら重ね着をしても風が手足の熱を奪う
身体の芯が震える
油断していると泣きそうになる
気付けば足元ばかり眺めていて
眉は額にギュッと集まる
そんな険しい顔の人ばかり歩く街のなかを
女が裸で歩いている
背筋を気持ちが良いほどに真っ直ぐ伸ばして
しなやかな手をしっかりと振りながら
軽快に歩いている、顔はうっすら笑っているではないか
背は高く、肌は標
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