抱える/相田 九龍
花瓶を洗面所まで持っていく。
中の水を排水口にゆっくりと垂らす。幾分大きな花瓶のためどうして水を汲もうかと逡巡したのち病院の外の水道を探しに行く。消毒の効いた洗面台が花びらの一枚一枚を枯らすかもしれない。
裏から出ると、謳う、宇宙まで続く青空が広がり、それを享受する緑が出迎えた。彼女は窓べりからこちらを見ている。手を振り返す。彼女の手相はとても薄い。花びらが一枚、ひらりと落ちる。
売店の店員さんは大きな花瓶に戸惑ったが事情を説明すると少し微笑んで了解をくれた。ホースから水を入れる途中、誰かに言い訳をしなくては、と思った。でも今まで誰も責めなかったし、この先も責められない気がした。入れ過ぎ
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