白い風船/殿岡秀秋
 
ができる

しかし使者はやってこない
王の子の印の白い風船もない

家が引越して
小学校を転校した
ぼくはこのまま
宇宙からの使者が来ないことも
ありうると思った

縁日で
親にねだって
白い風船を買ってもらった
かえり道で
躓いたときに
手から紐を放してしまい
風船は月に帰っていった

ぼくは特別な存在ではなくなった

新たな小学校で
後ろの席の男の子と仲良くなって
放課後遊びにいく約束をした
校舎の窓が
まぶしく光った気がして
振り返ったら
秋の陽が笑っていた





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