想い出/
真島正人
時間がたって、
ストリングスとワルツが
意味をなさなくなって
そのあとに
枯葉の季節が来たけれども
僕は感傷を全部目で追うために
部屋の中にいた
淋しげな
恋人たちの絵を
眺めて暮らしたよ
暖炉が
栗を焼く匂いにむせるとき
僕は冬にいる
手袋が
記憶を伴わずに僕の手に当てはまり
僕は自由に更新する
今の僕なりの
一寸にも満たない涙を
ずっと昔
寒村で
こんな空気の中を
荷物を背負って
歩いたっけ
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