還る/乱太郎
わたしは秋に還る
いつから此処を
ふるさとと呼ぶようになったのだろうか
紅葉した楓の葉を見て
ああ やっと きたのだね
忙しかった夏の終わり
(それはあまりに急ぎ過ぎて)
単調な嗤い声が白く響く冬の訪れ
(このまま融けることはないのかも)
秋は接ぎ木されて土の息を吸う
そして毛布を掛けるように
新たな息を吹き掛ける
わたしはただそんな秋を想う
私の名を聞いたことなどない秋
茜色した空
影が伸びてきて
わたしの肩に
風の小僧が遊びにやってきたみたいだ
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