青空/銀猫
 
冷たいゆびで
摘まんだ雪は
わずかにかなしい方へと傾斜し
山裾の町は
湖の名前で呼ぶと
青い空の下で黙って
わたしの声を聞いている


凍った坂の途中から
見渡すと
連なる峰の稜線が
町中を影で包み
薄く宵の気配を
漂わせて
気持ちを急かす

ここからは
戻る列車のレイルは見えず
わずかに
灯油の燃える匂いが
こころもとなさを緩めて
きみの背中を思い出した

過ぎた駅を
こころの隅に置いて
毛布のなかで
体温を探ろう
わたしのかたちを
覚えておくために


地図はきっと
もういらない




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