潔白の籠/智鶴
貴女が誇った水の城を
僕は一瞬で凍りつかせて見せるよ
それにはたった一言で
貴女が僕を撃ち抜いてくれればいい
暖かかった幻が
二人にはあまりに美しすぎて
愛し合う筈の僕達は
絡める指先の冷たさを知った
そこには湖も森もなくて
僕達は感情を持たなかった
ただ白いだけの純潔な世界で
何かの誓いを立てようとしていた
それが意味する絶望も知らずに
白痴のように無垢な心臓で
棘を握っては溢れる紅を
僕達は美しいと思った
崩れ出していく僕達の世界
軽薄なまでに純潔な白
知識を知った僕達は
触れあって見える真実を恐れた
それは白くて怖い夢だった
握りしめた掌は貴女の亡骸を抱いて
両手を広げて沈んでいく
灰色の水
貴女が吐き出す毒の呼吸
僕の好きな夕景を澱ませて
紫色に視界を染める
「貴方をこんなにも愛しているわ」
震えた声で君は沈んだ
貴女が誇った水の城を
僕は一瞬で凍りつかせて見せるよ
夕景さえも醜く見せる
君が真実を灰に出来るなら
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