立ち止まる/あらら
なぜなら
こんなにも遠い所まで来たのに
この場所さえ今の私にとっては
まったく違っているような気がしてくるから
*
人々の日々の営みや気晴らしなどのすべては
ただ いま ここに
立ちすくむしかないということを
やり過ごすためのものに過ぎないのかもしれない
*
しかしそうやって立ち止まってみることで
やっと分かってくることは
思いのほかけっこう沢山あるのだ
今日の空の色は
昨日とは少し違うということ
雲がその形と色合いを徐々に変えていきながら
ゆっくりと風にのって動いていること
くぐもった日の夕暮れ ビルの合間のわずかな西の空が
ほんの少し赤く染まっていること
雲のむこうに見え隠れする月のかたちが
まんまるであったりすること
明日もきっと
この世界の美しさに変わりはない筈だということ
そしてなによりも
私はそのことをこの世界に伝えたいのだということ
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