月と入れ替わる。/真島正人
 
(嘘っぱちさ)
どうしてこんなにも世界そのものが
深刻さを
どこかに放り投げてしまったのか
深刻な問題はもっと
根深く地中に張り巡らされて育っている
というのに
これはなにかの策略か
それとも
ありきたりの事実なのだろうか、時の
流れの最中の
植物の球根が脹らむように
今僕の胸の奥深いところで不安の心が
脹らんでくる
厚みをおびて
立体になって…
音楽が流れる
朝の日焼けの空に
まだ眠りたい町の向こう側に
光が差して
数え切れない幸福な思い出が
にわかな郷愁をおびて
流れ込んでくる
その様子はまるで川だ
誰にもせき止められない、僕以外には自分の心だか
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