今にも落ちてきそうな空をみた/影山影司
 
んだ。明かりが消えても、死ぬわけじゃない。そんなことより、空を、見るんだ。先ほどからパラパラ輝き始めた星が、今では真っ黒の空を掻き毟るように輝いている。もう落下は止まらない。明日の朝は来ないだろう。星の光が消えるとき、夜空は出来損ないの油みたいに地表を覆うのだ。初めはこの日本だけだが、それはゆっくりと海面を伝って、中国、アメリカにも広がる。広がったそれは未だ天にある夜空と蕩け合い、分厚い黒を世界中に流し込むのだ。

 今にも落ちてきそうな空の下で、私はでろんと寝転んだ。
 たとえ明日の朝が来なくとも、今日の夜はまだあるのだ。
 目を閉じると暗闇が広がり、街から伝わる騒音は絞られていく。
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