鳥の石/佐野権太
言葉はひかりより
遅れてやってくるから
たぶんまだ
君は粒子で
かすかな時間差の中に
小さく膨らんだり
縮んだりしているんだろう
空は淡く
まだ少し痛いから
僕は水辺にいて
円く平たい
石の温度を確かめている
整列する鳥の
いちわいちわに
名前をつけていたね
出合った頃の君の頬は
飛び去ってゆく
さみしさも知らずに
(鳥はみんな
(ここへ来て
(まるい石になるのね
茜をちりぢりにした水面と
君の指先を覚えている
言葉はいつも
ひかりより曖昧だから
小鳥のかたちの石を
流木のうえに置いてゆく
嘴の向きを少し直して
僕は立ち上がる
立ち上がるように羽ばたいて
空は斜めに―――
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