芦毛の伝説/ブライアン
電車のつり革につかまり、揺らいでいる男性。
おそらく、電車が止まる度に生じる力に抗する力を持っていないのだ。
男は頭をうなだれている。
よろめく姿から想像する。
彼は、今眠くて仕方ないのだ。
それでも、つり革につかまった男の手は、
肉が食い込むほど強く、握られている。
重力に抗するように。
もちろん、男が持っている力ではどうにもならない。
幾たびか、男はつり革の手がはずれ、地面に叩きつけられるような感覚を味わう。
そして、奇妙なことに電車の座席は空いていた。
他の乗客は訝しげに彼を見つめることしか出来ない。
田園都市線の修行かもしれない、と。
駅に止まる力で、
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