楽器のようになりたい/あらら
 
楽器のようになりたい 私は あなたの楽器に

あなたの指先が 描こうとする 一つ 一つ の音を あなたの思い描く そのまま その通りに表したい そして そうすることで あなたが 次々と 美しく悲しい音たちを 奏で続けていられるように あなたの息が 身体じゅうに響き渡り 私を震わせ 発する音が この世界の隅々にまで 満ち溢れていけばよいのだ 静かに そっと 息を抑え 鳥肌が立つような旋律の始まりがあり 有無をも言わせね 唐突な リズムの始まりがあり 掠れ 輝き 長く 短く 震え 伸びやかに 滑らかに 弾け 艶やかに 乾き ゆっくりと 速く その見えない音の形や音色の 繰り返しと 組み合わせが 移ろう
そうして いつも 未だ来たこともないように感じるところへ 急き立てられ 引き戻され 決して迎えたくない 来て欲しくない 甘美な最後の一節を 一音を 痛切に 希求する

楽器のようになりたい 私は あなたの楽器に

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