ひとつのソネット/あらら
夜空に浮かんでいた月は一つだけだった
私はあの人の横顔を思い出しながら帰り道を歩いていて
いったいどれだけの奇跡を重れば
こうしてあの月を眺めることが出来るのだろうと考えていた
世界中どこを探したってあなたの心は一つしかない
そして取り替えることも分けることも出来やしない
私にはどうすることもできない
あなたの心にこうして出会ってしまった
一度きりで宙へ消え行くと定められた音楽が
世界の空気を変えてしまうことがあるように
なんて一つとは儚く豊かなんだろう
だからこそ私たちは繰り返し
ただ一つしかないものを
いつまでも切なく追い求め続ける
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