薫る想い/らぐ
 
 ふわり、ふわり。

使うとは思わなかった効果音
すれ違いざまのあなたから


右手が微かに触れた一瞬の事
優しい桜の香りよりあたたかなあなたの温度
涙線がくずれそうなくらい切ない温度
あなたの綺麗な横顔が
真っ直ぐ見つめる視線の先が
誰なのか気になって
でも振り向けなくて名残惜しく視線を逸らす

一瞬だけあなたの視線を私にくれませんか

なんて思いをパレットにまた塗り描く
日の出ない時間に見る夢のように
すぐ消えてしまう淡い想い




晩秋のような焦げ茶色に染められたあなたの髪から

ほら、また

 ふわり、ふわり。





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