座布団/朧月
 
それぞれの親がしんだときのことを語った
それが約束のように
背負っていると思い込んで
なにかを決めようとした

自分がしぬなんて考えもせずに
残ることを話した
それがどんなことなのかなんて
今 知りたくなかった

何日たっても慣れることなく
慣れた手つきで花を添える
言うべき言葉もおもいつかないまま
手の平をあわせうつむいてる

しまったままのカーテンをお互いにあけずに
また一日が過ぎる
無言でいていいはずもないのだけれど
無言でお茶をすすった


だれも座らない座布団だけが
だれかを語っている
すこしくぼんだ その跡が
語っているから 見つめている


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