女のゲイ、男のレズ/吉岡ペペロ
 

からだや精神のからくりを

勉強したくて

ふたりは抱きあったのかも知れない

女は女のゲイだと言った

俺は男のレズだと言った

からだというのは歳を経てゆくと疲れやすくなるようだ

二十代のころ風邪が治るとまさしく全快という感があった

三十四五あたりから治っても全快という感じがない

風邪をひくたびに健康状態の目盛りが

その正常値が下がっているような気がする

精神というのは歳を経てゆくと性と同化しやすくなるようだ

二十代のセックスは快楽を追い抜こうとするあまりからだだけがオフサイドしていた

三十四五あたりから快楽は精神にとどまりそこへ漂着するように果てるようになった

要するにセックスに執着がなくなってしまったのだ

快楽が永遠を約束するものではないことを知ってしまったのだ

からだや精神のからくりを

勉強したくて

ふたりは抱きあったのかも知れない

女は女のゲイだと言った

俺は男のレズだと言った
戻る   Point(5)