創書日和「樹」 きみという人/逢坂桜
 

「ひさしぶり。元気だった?

 こないだのアレ見た? すきだったじゃない。

 じゃあ雑誌は? ずっと買ってたよね。

 突然バックパッカーになったりしてさ。

 ・・・え? あたし?

 あたしのことはいいから、聞かせてよ。

 いま? 家だよ。食後にまったりしてる。

 車の音って・・・そんなことより、楽しい話しよ?

 ね?

 ・・・泣いてないよ。泣いてない」

ケータイを持つ手が震えて、ウィンドウに映るあたしが、にじんだ。

素直になれないあたしが、

安心して寄りかかってしまう。

きみは、そういう人。

「・・・ありがと。電話してよかった。

 うん。またね。

 大丈夫。元気になれた。ありがと」

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