記憶の海から/小川 葉
かつて人だったものたちの
声に耳を澄ましている
繰り返される
波の音は
そのようにも聞こえ
バスは子供たちを乗せ
茜色に染まりながら
海岸線を通り過ぎていく
+
水面すれすれを
飛行するカワセミを
魚は岩陰から見ていた
自由になりたい
と思っていた
帰り道
あの魚は今
どうしているだろう
+
ジャングルジムの
ジャングルで
遭難した家族の話
私たち
もうどこにも行かなくていい
という話
そんな話ばかり
母から聞かされたという
友人の話
+
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