酔いどれ部屋/藪木二郎
 
 夢だった
 ロマンスぶりの抒情詩人が

 砂漠を渡り
 海を越え
 港々で娼婦を堕とし
 都会のサロンに死を持ち込んで
 その芳香でマダムたちも

 この青年は悩みもせずに
 即席ハレムの太守となって
 けれども彼のヴィナスの詩には
 冷酷に
 マダム何某の尻の谷間に
 チラリと疣痔が覗いたなどと

 なぜか俺には娼婦が馴染むと
 物憂げに
 物憂げに

 そして砂漠が恋しくなって

 ああそうだ
 十九で詩なんか棄てるんだった

 が
 四十路の俺
 今からコンビニまで大遠征
戻る   Point(1)