緑のみんみん/海里
夏の思い出
台風の帰り道
みんみんを拾いました
踏まれるよりは
木にでも置いてやろうと拾い上げると
意外にもみんみんは力強く暴れて
暴れて飛びついた先が私だったので
服にくっつけたまま連れて帰ってきちゃったのでした
家の図鑑を調べてみると
やっぱりみんみんです
薄めたメープルシロップを
ガーゼに浸してベランダに一緒においてやりましたが
食欲がないのか口吻が動かない
メープルも樹液とはいえ
元気でも飲んだかどうかわかりませんが
みんみんの背中は緑色
中世の騎士の甲冑の胸当てのような
羽化したばかりのアブラゼミの緑色ともちがう
エナメルめいたペイズリー
翌朝にはもう
どこにも見当たりませんでしたが
終わりかけた夏の体で
いったい自分で飛び立てたものか
改めて何かに攫われて喰われでもしてしまったものか
夏の終わりには
みんみんの子供たちはみんなもう
卵から孵って土の中に潜り込んでいるはず
春ではなく
数年後の夏を待って
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