すい と参る/山内緋呂子
破 点線のぬり絵
やぶれても
まだ 色がぬられてない
電車内で 公園で 商店街で 能楽堂でぬっていくところです
能舞台では
面と厚い衣装
おはなしの全てが声
生き方の全てが
面下の
声から
言葉から
音に 気持ちがあるそうです
能楽堂を通らずに
商店街 住宅街を通って
うちには帰れません
そうして色を ぬっています
点 線 でやぶれて 床におかれています
実はこれ
すい と移動するとくっついて ぬり絵ができます
すい と 音にのって移動
楽しそうだ
できあがった絵を
アロンアルファで すい と固定
またやぶれてもガムテープやセロテープではしない
めんどうくさい
一緒に マティス盗もう
モディリアニが好きでも上野では
来ない いない
来るのを 幾度の秋も 待とう
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