冬の海で/瀬崎 虎彦
 
かつて少女であったものの断片
ある切れ端
突端から眺める切れ端
破片
かつて少女であったそれ
その部分
少女の一部分
白い影を波間に
少女らしいたおやかな
少女らしい生臭い
少女らしい線の
ため息
少女という女
女の切れ端
女であることの
代理性をはらんだ
少女と呼ばれるものの断片
突端から見上げる少女的なものの
少女的な軽さ
少女的な女のにおい
少女的な少女
女的な少女
少女
の断片が
海に降っている

少女の
断片が
人のいない
冬の海に
降って来る

さびしい声で啼く鳥たちも
季節に追われて
姿を消した

季節の断片であ
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