山田せばすちゃん『ハンバーグをめぐる冒険』について/田代深子
 
ーグが〈正真正銘
ハンバーグそのもの〉〈になる〉〈そのときを〉〈待つ〉ことになる。
 目前の未ハンバーグに導かれ、〈正真正銘ハンバーグそのもの〉があるはずの茫漠たる
世界の「ほうへ」、彼は足を踏み入れる。いや、足を踏み外したというべきか。そこに温
かい会話のあるレストランが? 妻の疲れをいやすゆったりしたテーブルが? 子ども達
の夢を叶えてくれる驚くべきドリンク・バーが? そんなことはわからない。それでも、
その世界の「ほう」を指向し続けることを、選び続けていく。
 空腹と孤独に耐え、執拗に。

                                   2004.9.20

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