握りしめた森に/なまねこ
 
私の握りしめたそれは
どうやら
すべてではなかった
強く握りしめた
それはかけらだった
削られてもおらず
本当は
核でもなく
握りしめたそれは
どうやら
ただのかけらだった

その場の
窮屈で
がらくたと
プライドの転がる
平地を見回しても
悲しみは見えなかったが
涙は出ていた
鼻汁も出たが
涙ほど心地よくもなかった
私は時間をかけて洟をかんだ
舌についた液体からは
ふざけきった近未来と
まともな悲しみの味がした
どこか見知らぬ土地の
見知らぬ誰かが
悲しんでいるように思えた
これは
私のものではないと思えた
ようやく
そう思えた

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