あるカウンセリングの一場面/りょう
 
たような臭いがして
  振り向いたら
  服が穴だらけの青年が立っていました
  一番安いヴァイオリンをほしいと
  言ってきました
  とにかく出ていってほしかったんです
  知り合いの楽器屋が店を閉じたときに
  置いていったススけたヴァイオリンを
  青年にくれてやって
  店から追い出しました
  すると急に陽が差したので窓を見ると
  いつもはうるさい小鳥どもが
  食べカスの実を
  地面にまき始めていたんです
  もう青年の姿はなくて

 …私は追い出した
  ヴァイオリンそのものを
  心から愛する青年を
  私は追い出した(泣く)

この様子からすると
このカウンセリングは長引くだろう
あまりにもつらい過去に
触れるかもしれない
しかしこの主人は
本当の喜びをきっと見つける

途中であるが
ここで私はこの手記を終わりにする
まだ途中であるからだ

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