水辺の夜明け/プル式
 
紡ぎながら空にそれを返しに行くのだ
ベガ、アルタイル、星の名前なぞそれしか知らないが
それが何の妨げになると言うのだ
時間はもうはや幾らだって在る
緩やかに流れるこの先にどんな不安が有ろうか
一体何に行く手を妨げられるだろうか

ああしかし夜が明ける
まるで世界を焼き尽くすかの様に赤々と燃える
我が身が溶け合う様に求めさ迷った時間と空に
沈黙の別れを告げる朝になる
(告げねばならぬ朝になる)

両の眼は流れるべき川を空に睨み付けたまま
いっかな出ないこの手この足はまるで石になってしまった
ああ何を恐れると言うのだ
真っ白な光の国にいったい今以外の何があろうか
溶け出した身体に成り代わるどれだけの物があろうか
光の中に何を求めよと言うのだ

空は真黒く俄かに曇り
そこに落とした幾度かの溜息を嘲笑った
舟は私を乗せる事無く流れてしまった
私は今日もまた空を見上げる
くるりと太陽に背を向けた時
さっと静かに風が草を撫でた。


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