まぶたの裏色のセーター/りょう
目覚めると窓の外で
半月から黒い糸が遠くに降りていた
糸の先を追って家を飛び出すと
町から外れ 草原に一軒ある
家の煙突に続いていた
窓をのぞくと中から
「お入り」とおばあちゃんに言われた
ほっとくと月は黒ずんでしまうから
こうやって糸をまくのさ
そうすると満月に戻る訳だ
なーに 闇は束ねても闇で
部屋いっぱいになることはあっても
家いっぱいになることはないさ
これで服を編んで
いつか誰かに着てもらうのが
楽しみなのさ
この黒くて暖かいセーターは
今でも僕のお気に入りだ
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