彼と彼女のこと/瀬崎 虎彦
ようするに孤独をかこつているだけなのかな、と
画面に向かって彼は思っていた
こんなにも沢山人がいるのに
隔絶されたように感じるとは
それから時間を使うのがとても下手になって
これをしようという予定を消化できないこと
それから予定さえ立てられないことが続いた
昨日の天気が思い出せなくなった
世の中にはもっと大変な人がいる
そのことを知っているというより理解しているつもりで
それなのに自分ばかりがなぜ、と思いつめた
深い深い底に心が落ちていった
あるいははじめから深い深い底にいて
空を見上げていた そして彼女に出会う
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その孤独の壁は偽物でした
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