たとえどんなに今この瞬間が/あらら
 
たとえどんなに今この瞬間が
僕たちの心をとらえて離さないのだとしても
この次の瞬間には
僕たちのあいだのこのできごとも
胸いっぱいの気持ちも
何もかもすべて
世界中至るところどこを探しても
見当たらなくなってしまうのに違いはなく
それは美しい音楽が
静けさの中へ
吸い込まれるようにして消えゆくのと同じように
僕たちの記憶の中に残されるだけで
そしてやがてはその記憶そのものも失われ
いつかは君にも
この世界そのものへも
さようならということに
はじめから決まっているのだというのに
それでも今は
身も心も奪われてならないのだというのなら
この瞬間のために
僕たち
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