霜月の末/オイタル
 
えたりすると
まるで言いそびれた義母の独り言のようです
空が明るくなるにつれて
街頭の明かりは
横切る車の銀のボディや闊歩する若い男たち女たち
まっすぐな歓楽の声の中に沈んでいきます
けれどもそれは
沈んでいるだけでおそらくそこにある
死んでいった人と生きている人の境目が
どの辺りにあるのか
はっきりとわかったものじゃない
影の薄い生者と影の濃い死者
だから 玄関の扉が
何の前触れもなくゆっくりと開いたり
私たちの体が知らぬ間に壁をすり抜けてしまったり
することだってあるわけだ
あるわけだ

などと言うと
義母が天井の後ろで
大好きなお刺身をしゃぶりながら
カラカラと笑っていたりするのです
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