霜月の末/オイタル
霜月の末
義母が逝きました
筋肉が次第に衰えていく病で
手足も口も思うにまかせないままの死でした
目だけがよく動いて
さびしさとうれしさを伝えていましたが
妻は静かに泣きました
義妹も義弟も、泣きました
老人たちが
置物のように並んで
はらはらと泣きました
お線香のけむりが
うす青く乱れていました
骨を納めた
冷たく静かな墓石の周りは
きれいに掃かれていて
小さく固まった時間の塊があちこちに
コツリコツリと
音を立てていました
明け方
灰色の空、藍色の雲
濃い木々のシルエットや家の壁の隙間から
小さくしかしはっきりと点るオレンジの街灯が見えた
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