たった一つの言葉で/あらら
僕がいま使うことのできる言葉より
それよりも数多く何倍もの言葉を
思うように自在に使うことが出来るのだとしても
僕にはこの気持ちを
間違いなく正確に言い表すことなんて
とても出来るような気がしない
きっとそれに
本当に言いたいと思っていることなんていうのは
おそらくそれはいつだって
たった一つの言葉でも充分であるに違いない筈なのだ
そんな風に思えてならない夜を
これまでに散々何度も過ごしてきたのだというのに
どんなにその言葉を囁き合っても
この気持ちを言い尽くせたような気が僕はしない
心の形だけは
痛いように手にとって感じることが出来る
それでもその中身は一体ど
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