成り変わり/古月
 
髪を結わえど瞼は針山
紅を差せども頬は熟柿
臭い立つ肌、稚児の麝香
何れ人には変りなければ
骨の一つも残しはせぬと
打ち棄てられた糸引き車
川溜めを浚う水車
畜生腹を見ていた風車
寄って集って女を教える

父は目交う、母は抱く
私は何処へ、いつ帰る
黒目と白目が転繰り返って
唄をうたったり影絵をしたり
片耳の狐、首攣る雁、顎の無い犬
八手か羊歯、楓か椛葉、何れ人でなし
覗込んでは涎を垂らし
唯々耽る、光る指先
乳房の先の、縊れへと這う
膨らみ、捲れ、開き、口を開く

畳の下には知らぬ顔の
私と、母と、母に纏わる
見知らぬ、敬う、喉奥を撫ぜる
流せど、噤めど、血の巡り、巡り
逆子の腹が支えて、痛い
赤子の私は母を嘔く
母に成る迄、生まれては死ぬ
堂々巡りの物云う菩提
目元から変じる、成り変わる
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