こんなにきれいなマドリード/瀬崎 虎彦
尋常ではない色彩感覚の中で
戯れ歌い泣きなぐさめられる小さな箱の中の宇宙
まばらに直立不動のバルチテリウムを眺めていると
まだまだ化石にはなれないなあ、と安堵したり悔しい
個人的な体験にすぎないものを
より広い射程を有すものに変換して
そこから世界へ手渡そうと遠く投げ
案外言葉はスルーされて終わる たとえば今
そのころ僕はパリで大雪が降った
去年のお正月のことを思い出して
随分寒かったなと反芻しているよ
そのころ君はマドリードの白い街路を
転ばないように気をつけて歩きながら
こんなにきれいなマドリード初めてと思う
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