夢見る僕は観念する/百瀬朝子
冷たいにおいがする
触れる鼻先がひやり
冬が近い
きみはまた遠くなる
僕の影が夕日で伸びる
僕の足元から去っていこうとしている
僕はすべてを捨てたがっている
捨てられるより捨ててしまいたい
焦燥は賢明さを解体する
おろしてはならない荷物を
置き去りにしたくなる
僕はまだ明日に夢を見る
どこかできれいごとを信じている証拠
もう沢山だ
踏みにじって、
踏、
踏、
踏、
踏、
踏、
踏、
薄っすら積もった雪に真新しい足跡
踏みにじって
踏みにじって
捨てたい荷物は雪に埋めて
僕は春を待とう
見逃してくれ
きみはどうせ行ってしまう
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