無と有からなる滑稽さ。/敬語
全てが崩れ落ちた世界。
命有るものも、命無いものも。
形有るものも、形無いものも。
色や時間や空間さえも。
もう世界には何もない。
そんな世界で、僕はただ歩き続けていた。
何も考えることなく、何も想うことなく。
ただし、自分の意思ではなくて。
「視界に入るは無。
そこに有はなく。
有は僕だけ。」
無の世界に存在する有。
それが僕。
無に為りたくない世界のせめてもの抵抗。僅かなる対抗。悪あがき。
それが僕。
ただそれだけのために存在し、ただそれだけのために歩き続ける。
それが僕。
「嗚呼、僕は滑稽だ
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